加齢と食事

 「加齢すると」という表現を聞いたことがありますか?「加齢」とは読んで字のごとく「年齢を増すこと」を言います。年齢を増すことは「年をとる」と考えるとネガティブなイメージですが「年を重ねる」と考えると、生きていることの深みが増すようでなんだか素敵な響きに聞こえませんか?月日の中で培った経験は英知となり、未経験なものを悟らせてくれるのは人も動物も同様だと思います。
 ところが、現実とは厳しいもの。精神的には成長できても肉体的な低下は避けることが出来ません。細胞は確実に年とともに変化しているのですねその兆候は多様な形で日常生活に現れますが、気づいていても受け入れるのに時間がかかるのが現状です。特にその変化が人よりもずっと短い期間で訪れる愛犬や愛猫では、ついつい「そんなことはないはず.」と変化を認めたくないものです。高齢期は人同様、個体差がありますが7歳を超えたら日常生活における変化はないかを今まで以上によく観察し、健康でも最低1年に一回、理想的には2回は動物病院で健康チェックをしたいものです。そうすることで目に見えない部分の変化にも気づくことができるため、早めはやめの対応で高齢期をサポートすることができます。
 一方で、健康上問題がない場合でも、「睡眠時間が長くなった」、「つまずきやすい」「疲れやすくなった」「いつも通りに呼んだのに気がつかない」「食欲が低下した」などの行動変化が現れ始めます。このような変化が見え始めたら、それはもはや「犬を変える」のではなく、高齢動物をケアするために「自分が変わる」きっかけだと考えてくださいです。彼らはいつも通りなのですから。このような行動変化は「視覚、嗅覚、聴覚」の衰えがきっかけとなります。特に、「嗅覚」と「聴覚」は危険を見分け安全を判断するためにもっとも重要な器官なので、鈍くなると不安などの精神的な変化も伴ってきます。よって、彼らがいままでのように快適に暮らせるようにするには、飼い主様の「心構え」と「生活の工夫」が必要です。
 「急に後ろから触らない」「寝ているときに自分の都合で起こさない」「大きな声でボディーランゲージと一緒にコミュニケーションをとる」「行動を急がせない」など工夫できることは多くありますが、飼い主様が意外と気がつかないのが「食事の与え方」です。なかなか食事を口にしないため、「食欲が落ちた」と考える前にして欲しい簡単なチェック方法があります。これは視覚や嗅覚をチェックするための方法です。ゆでたささみなど大好きな食べ物を少しもって目の高さにかざしてみましょう。くんくんと鼻を近づけてきますか?そしてその手を左右上下にすこし動かしてみましょう。目が食べものを追っていますか?これらの反応が見られない場合、いつものように食事をおいていても食事に気がついていない可能性があります。このような場合、「食事の少し温めるなどして臭いを強める、口元に食べ物を近づける、唇に少し付ける、手から与える」など、犬または猫によりその方法に多少の違いはありますが、大切なのはもはや「食べるのを待つ」ことではなく、「食べさせる」ことです。食用が低下したまま、放っておき十分な栄養が摂取できないと、体力だけではなく免疫力も低下し、老化を加速してしまいます。
 また、高齢になると「環境の変化」に対応し難くなってきます。それはお腹の中も同じこと。食事の種類や形態を変えるときは、急に変えることのないように徐々に変えてください。また飲み込む力も低下してくるので、のどに詰まるような食べ物も避けましょう。

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