自分にできること

 昨年は色々なセミナーを通じて、多くの飼い主様にお会いすることができたことは大変貴重な経験でした。あらためて、飼い主様は家族としての愛犬や愛猫の「親」であり、いかに彼らとの生活をよりよいものにしようか日々努力されていることを実感することができたことを嬉しく思いました。そのなかで、比較的多かったご質問が、「一番良いペットフードは何か」ということと「現在の健康状態をサポートするために自分に何ができるか」ということでした。まさに毎日の生活に密着した、必要不可欠なポイントを得た質問です。
特に、飼い主様にとって薬でコントロールしきれない「かゆみ」や「痛み」といった「炎症」に関与する体調の変化は、何とかならないものかともどかしさや苛立ち、そして時として悲しみを伴うものですよね。今回は、飼い主様が治療とともに炎症をサポートできる方法について考えてみました。

 アレルギーや関節炎など病名を一つずつとるとまったく別の問題のように聞こえますが、「炎症」がおきているという点で身体におきている共通項があります。それが「免疫機構の障害」です。何らかの原因で免疫機構の調整が取れなくなった結果として炎症は起こります。いわば「身体からの警告または悲鳴」ですね。そして、いったん生じると様々な症状が数珠つながりに生じます。そのため飼い主としては何をしてあげればよいのか不安になります。特に慢性の炎症では、良くなったり悪くなったりを繰り返すため、ストレスも加わってきます。しかし、このことは動物も同様です。彼らは「本能」に忠実な生き物です。「食べる、動く、寝る」このシンプルかつ必要な生活形態が思うようにとれなければ、それはどんなに不安で苦痛でしょうか。つまり、飼い主様がサポートできることはこの3つのことです。

 「食べる」ことは最も大切です。何を選び、身体に送るかで健康状態は左右されるからです。そのためには「現在の食事が適しているのか」を見直してみましょう。一般的にはタンパク質の「種類」のみが話題にされますが、その「品質」もまた重要です。品質が悪ければ、身体はそれを必要物質とみなさないため、栄養として吸収されないばかりか、炎症反応などを起こします。また良質なたんぱく質源で構成されていないペットフードの多くは、穀類などの炭水化物が多く、これ自体が炎症の原因物質になっている可能性があります。さらに肉食動物である彼らには栄養吸収にも悪影響を与えます。かつ炭水化物の多い食事は、肥満を招きやすい傾向にあります。脂肪組織は炎症の原因となる物質が産生され、かつ毒素が蓄積されやすい場所です。このことが肥満は万病の元である所以でしょう。良質なタンパク質であれば少量で必要な栄養が摂取できるため、身体にも負担がかかりません。正しい食事を選択できた上で、炎症を軽減する作用のあるEPAなどのオメガ-3脂肪酸、免疫力をサポートするビタミンE、活性酸素を除去する、ビタミンC、タンパク質の分解をサポートする消化酵素などのサプリメントを利用すると良いでしょう。あるいはある一定期間「手作り食」にして体調の変化をしてみると言う方法も考えられます。

 痛みがある場合、お散歩はしたがらないものですが、毎日少しずつ、たとえ3~5分であっても大きな気分転換となります。その他にも、マッサージは血行促進だけでなく、精神的な安定にも効果的です。そして食事や運動のリズムを規則的に生活に取り組むことで、十分な休養がとれるようにしてあげてください。このような効果はすぐには出ませんが、飼い主様の努力と前向きな気持ちもまたペットを支えることのできる大きな力です。

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