犬の認知症

 人間の世界では「アンチエイジング」が大流行。そう、誰もがいつまでも若く美しく、そして健康でいたいのです!! しかし、化学の発展の恩恵により見た目はなんとかごまかせても体内細胞は確実に年をとっているのです!(ヒッ、こわいよ〜!!)加齢に伴う諸機能の低下は避けられません。記憶力や、運動能力など確実に以前とは違ってきているものです。そんな老化現象のなかで最も怖いのは、やはり「認知障害」ではないでしょうか?認知障害は、単なる機能低下に留まらず、その人格や行動、生活パターンまで変えてしまうのです。「脳」は生命のコントロールタワーです。指令者の存在しない身体が、爆走し始めても不思議ではありませんが、このような変化は一緒に生活する家族に大きな戸惑いと悲しみを与えます。さらに何もできないもどかしさが輪をかけ、認知症の家族を抱える家族は大きなストレスと共存する結果となります。一方で、近年では、治療方法が開発され、また栄養や食事との関連性についてわかり始めました。それだけでも、お世話をする家族にとっては暗中模索のストレスと異なり、方向性が見えてくるので重圧感が軽減されます。

 この認知症は高齢化する犬社会でも生じています。今回は、認知症の予防およびケアそして飼い主ができることについて考えてみましょう。

 犬の認知症もヒト同様、脳神経に「ベータアミロイド」というタンパク質が蓄積することにより生じます。多様な変化が生じますが、行動面では、ぐるぐると部屋を円状に繰り返し歩き続ける、意味も無く突然吠える、壁や空間をぼうっと見つめるなどがあります。いままでできたルーティンワークはもはやできず、呼びかけに対しても、反応しないなど、家族に対しての親密感も薄くなります。また睡眠も昼間寝て、夜起きて行動するようなことが生じます。元気で生き生きしていた頃のわがコのこんな姿を見るのは本当につらいものです。一方で残りの人生をどんな風に過ごさせてあげるかは飼い主様次第です。

 カリフォルニア大学で行われた「ヒトと犬の認知症と食事および環境との関係」の研究では抗酸化物質、エネルギー産生補酵素および果物や野菜が多く含有される食事が短期、または3年間に渡る研究において、認知症を遅らせるに良い結果がでたと報告しています。さらに、食事の要因として、コレステロールとホモシステイン(アミノ酸のメチオニンから産生される)の高い食事がベータアミロイドの蓄積を増加させたと報告しています。そして、低コレステロール食をスタチン(下垂体前葉のホルモン分泌を促進する因子)と一緒に与えたところ、生活改善が見られたため、認知症のリスクを軽減できる可能性がある。またホモシステインが高い食事には「葉酸」のサプリメントが効果的であると提唱しています。その他の研究では、抗酸化剤やオメガ-3脂肪酸のサプリメントに効果があったと報告しています。

 では、飼い主として何ができるのか、栄養バランスのとれた消化吸収の良い食事を与えることは当然基本になりますが、その他には体内で発生したフリーラジカルを除去し、細胞の炎症を抑えるところにポイントがありそうです。サプリメントとしてはベータカロテン、ビタミンC,E、そしてオメガ-3脂肪酸が考えられるため、このようなサプリメントの利用が考えられますが、このような成分を含有しているペットフードを与えている場合には、「おやつ」にこのような成分を含む果物や野菜などを取り入れていくのが良いでしょう。

 また、研究では、食事だけよりも適度な運動や環境における刺激が伴った方がより効果的であるといっています。たとえ、状況が変わってしまっても、今まで同様に愛情を注ぎ、声かけをし、一緒に散歩を楽しむといったことが食事同様重要です。どうかいままで以上に愛情を注いであげてください。

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