食べさせる工夫 II

 「うちのコ食べないんです」というコに対しての食べさせ方の工夫は前回お話しました。今回は「なんでも食べちゃうんです」タイプのコたちのお話をしましょう。

 全体的に観ていると、年間を通して常に食欲旺盛で、食べるのが早く、さらには食べ物ではないものまで飲み込んでしまったりするタイプのコたちは、ミニュチュアダックスフンドやコーギーなど鼻の長い犬種に多いようです。

 多様な要因がありますが、まず飼い主様にチェックしていただきたいのが、現在与えているフードの種類とその栄養構成です。ダックスやコーギーは太りやすい傾向があることを知っている飼い主様たちは、意外と早い時期からダイエット用などの低カロリーフードを与えています。ダイエット用のフードや低カロリーフードで全体のカロリーを落としているフードは、脂肪を制限しているほかに、動物性たんぱく質(肉、魚など)よりも植物性たんぱく質(穀類、豆類)を使用し、さらに食物繊維の割合を増やしているのが特徴です。結果フードの「かさ」は増えるのですがカロリーは低いということになります。しかし、体は細胞や血液、ホルモンにいたるまですべて「たんぱく質」で構成されています。さらにそれらを代謝した結果生じる代謝産物をできるだけ制限するには「良質のたんぱく質」つまり、動物性たんぱく質のように、生物価が100またはそれに近いものが理想です。良質のたんぱく質を各個体の必要量摂取していれば、細胞が満足するため動物はそんなにがつがつと常に飢餓感を訴えないといわれています。また、ダックスフンドなどは比較的高脂肪食が適しているようです。脂肪のカロリーは、炭水化物やたんぱく質に比較するとその2倍以上もありますが、その分体内で消費されるのにも時間がかかるのです。つまり適当に脂肪が含まれていると脂肪がない場合よりも「腹持ちが良い」ということです。この腹持ちを良くするためにダイエット用フードでは脂肪の代わりに食物繊維が多めに使用しますが、食物繊維には糞便量を増やし排便を速やかにする働きもあるため、結果すぐに空腹感を覚える傾向にあるようです。また、穀類はたんぱく質も含みますがその多くは「糖質」です。糖質は代謝され、エネルギーに変換されますが、過剰なエネルギーは脂肪に蓄積されるため結果肥満になったりすることもあります。柔らかく太っているタイプのコはこのパターンで、穀類中心のフードである傾向があります。逆に良質のたんぱく質で構成されたバランスのとれたフードを食べて太っている場合は、「食べすぎ」というより、「与えすぎ」です。

 個体に適した十分な栄養を摂取できるフードを選んだら、次はその与え方です。食べ物は食べてから約15分後フードが胃液をすって膨張して満腹中枢が働くため、早く食べていると満腹を感じないうちにさらにまた食べていることになります。そこで「早く食べられない」工夫をしてみましょう。いつものフードをいつもの量、ぬるま湯などでフードの中まで柔らかくなるように十分いふやかし、それをフォークなどでつぶしたものを、陶器のお皿に広げるように伸ばしてあげてみてください。いやでもフードは舌ですくわないと口の中には入らないため食べるのにいつもより時間がかかります。また最初からフードに水分が含まれているため、胃液をすってから満腹感を感じることも避けられると同時に消化も早くなるので、肥満も避けられます。すでに肥満気味な場合は、この方法で1日に2回給与していたとすれば3回に分けてみるとさらに消化が早くなるし、食間の時間が短縮されるため、食べるのが大好きなコも満足してくれるでしょう。なんでも飲み込む習慣は大変危険なので、眼のつかない場所に置くと同時にこのような方法で食事に満足感を与えてあげてみてはいかがでしょうか?

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