栄養素はグループ行動

 「食い合わせ」という言葉を聴いたことがあると思います。ある種の食べ物を組み合わせて食べることでおなかを壊す、あるいは逆に相乗効果を生むといったようなことを「食い合わせが悪い」または「食い合わせが良い」などといいますよね。「なんでこの組み合わせ?」かと不思議に思いますが、食べ物全体というよりは、その食べもの特徴的な「栄養素同士の組み合わせ」を考えると分かりやすくなります。例えば「てんぷらとスイカ」で考えて見ましょう。「てんぷら」の特徴的成分は「脂肪」または「たんぱく質」です。一方「スイカ」は90%くらいが水分です。脂肪やたんぱく質は胃に入ってから胃液でおもに消化されますが、そこに水分が多量に入ると、胃液が薄まり消化不良を起こす原因となります。また、加熱した食べ物と、非加熱のものを一緒に食べることもお勧めしません。「てんぷらとスイカ」にあるように、消化が効果的に行われないことが理由です。つまり、本来食後の果物は、生ならば少し時間を置いてから食べる、又は加熱したデザートにするなどの工夫が必要ということになります。そう栄養素は「類は友を呼ぶ、グループ行動」という特徴を持っているのです。また、このことは食材自体の栄養構成においても同様です。ホリスティックな考え方では「全体を食べる」ことを薦めます。食べ物はいくら栄養的にバランスがとれていても、効率的に消化吸収されなければ、かえって身体に負担をかけることさえあります。自然の食材は、全体を食べることでその食材に含まれている栄養素を効果的に消化吸収できるように構成されています。一方、加工食品はこれらの自然構造をバラバラにして、見た目の良いように、あるいは栄養学上の組み合わせを再構築します。つまり、この食品中に「自然に存在する生きる法則」は存在していないのです。パズルのように組み合わせた食品は見た目は同じかもしれませんが、それぞれ単独行動で全体の調和に欠けます。栄養のバランスとは本来、それを取り入れる側の生体の働きをさらに高めるできものだと思うのです。ですから、「何を食べるか」よりも「どうのように食べるか」が重要なわけです。

 この考えに基づいて最近気になっているのが「カルシウム」の取り方の問題です。一般的にはAFFCOで定められた必要量を基準として、必要量を決定していることが多いようです。しかし、その必要量は、犬の「健康状態または栄養状態、年齢、活動状態、服用の有無」などの因子によって異なるため、すべての犬に当てはまるわけではありません。また、何をカルシウム源として使用するかによっても、その吸収率の違いから必要量はことなります。「ミネラルは必要な分だけ吸収されて後は排泄されるから問題はない」というかなり大雑把な意見を聞いたこともありますが、それではその不必要分を排泄する腎臓への負担はどうなるのでしょうか?リンとのアンバランスはそうなるのでしょうか?さらに、カルシウムは「骨を丈夫にする」イメージが強いと思いますが、その他にもホルモンや神経系とのバランスに大変重要な役割を果たしているのです。

 またカルシウムは食物繊維やフィチン酸を含む小麦製品などと一緒に摂取すると、吸収阻害が生じます。ですからこの二つを組み合わせていくらカルシウム摂取を目的としたおやつなどを作っても実際には栄養的効果は薄いということになります。一方カルシウムは、乳糖やたんぱく質と一緒に摂取することで、その吸収が高まるため、それらとの組み合わせで、必要量を効率よく与え、腎機能やその他の生体平衡に負担をかけないようにする与え方の工夫が必要だと思います。ある特定の栄養素の持つ効果に迷わされることなく、「全体のバランス」において必要なものを選び、愛するペットに与えていくという目を持つよう心がけたいものです。

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