食餌選びの基準は?

 近年「犬の栄養学」の普及に伴い、飼い主様にも、健康を維持する方法のひとつとして食餌に対する感心が高まってきたのは嬉しいことです。しかし、それと同時に増加しているのが「混乱している」飼い主様のようです。
 愛犬にとって良かれと判断し、選んだ食餌なのにあまり食べなかったり、太ったり痩せたりなど、疾患にまでは至らなくても予想外の結果を見るのは飼い主様にとってこの上ないストレスでしょう。そういった場合、飼い主様はわらにもすがる気持ちで食餌自体を次々とかえる傾向がありますが、以前にもお話したように、このようなパターンは実は犬の身体に負担をかけるばかりではなく、飼い主様の混乱をさらに増長させる結果となります。では、こんなときどうすれば良いのでしょうか?
 まずは現在の食餌と犬の健康状態の比較です。たとえば、「適正量食べさせているのに太ってしまう」あるいは「常に空腹のようで、痩せている」などの場合です。この場合は食餌中のたんぱく質源の質、量、種類が問題になります。身体を構成する細胞はたんぱく質でできているので、もしその食餌のほとんどが犬に必要なたんぱく質で満たされていない、あるいはその質や量が固体に適さない場合、犬は常に細胞的飢餓感を持つことになります。細胞的飢餓感は身体に、エネルギーを蓄積するよう信号を送るので、結果太ってしまうことがあります。また、過剰な炭水化物は中性脂肪が増加する原因にもなります。一方高炭水化物、低脂肪の食餌は人から考えると非常にヘルシーな感じがしますが、基本的に「肉食」であり、腸の短い犬にとっては、その食物繊維が多すぎることで必要な栄養までも糞便として排泄され、栄養吸収率が悪くなるため痩せるといったことも起こります。さらにこのような食餌は、エネルギー濃度が低いため必要な栄養を確保するにはたくさんの量を食べなければなりません。食の細いタイプの犬にとっては致命的です。これらの問題は、同じ炭水化物から生じていますが、前者は炭水化物中の糖質、後者は食物繊維の問題です。また。手作り食の場合、健康イメージの強い玄米は、栄養バランスは良いものの、犬には消化が悪いため、折角の栄養も十分に吸収できません。さらに玄米は白米と比較して「リン」の含有量が高いためその分カルシウムとの調整も必要となります。
 そして次に必要、しかし見落とし勝ちなのが、犬の食事形態が飼い主自身の生活スタイル、性格、経済力や知識力に適しているかどうかです。犬にとってはとにかく必要な栄養を摂取することが重要なのでいくら優れた食餌でも、飼い主様がそれを継続できなければ意味がありません。
 まずはペットフードにするか、手作りにするかの選択です。ペットフードにするならば、愛犬に適した第一選択肢のたんぱく質源は何が良いのか、どんな形状のものが良いのか、どんな給餌方法が愛犬に適し、かつ飼い主に可能なのかを考えていきます。手作り食ならば、食材の選択とそのバランスはいうまでもありませんが、毎食作るの、1週間分作りおきしたいのかによってもその下準備の仕方や九時方法が異なってきます。
 このように現在の食餌に迷ったら、やるべきことは、犬と飼い主の両方からの分析です。飼い主と生活を共にする犬は、もはやペットショップやブリーダーのところでの100%犬中心の生活と異なり、そこには飼い主の生活が共存することを忘れてはなりません。犬にとってだけではなく、飼い主自身もストレスを感じることない、お互いに楽しめる食餌を見つけ、表面的な情報に振り回されないことが混乱を避ける最良の方法ではないでしょうか。

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