良かれと思ってしたことが

 「相手によかれと思ってしたことが裏目に出る」。人間社会ではよくあることです。人間が対象の場合は、共通言語を通しての感情表現があるため、「裏目にでた」という結果を知ることができます。ところが対象が犬や猫の場合はどうでしょうか?共通言語がない場合、与えた側は、通常自分の都合の良いようにその結果を理解するものです。そして、その結果、大切な家族の健康を徐々に壊していることがあります。特に犬でこのようなことが多く生じているので、今回は、飼い主様が愛犬の健康に良いと感じる思い込みについていくつか例にとって考えてみましょう。


①よく食べるペットフードは健康に良いに違いない!

犬は雑食よりの肉食動物。そのため、その食性から食べるかどうかの判断はまず「脂肪」の臭いです。そのため、どのフードもフードを「ダイジェスト」と呼ばれる脂肪でコーティングしています。つまり、そのフードの栄養バランスではなく、「臭い」で食べ物を選択していることになります。小さな子供が甘いお菓子を食事より好んで食べるのに似ていますね。つまり、栄養バランスは飼い主様がラベルを読んで選ばなければなりません。栄養バランスがよくないフードでは、いつも空腹である、便の量が多い、便がくさい、被毛の艶が悪い、換毛期の生え変わりが悪い、運動をしているのに太りやすいなどの問題点が生じるので、食べることだけではなく、食べた結果どうなっているのかを観察してみてくださいね。


②ペットフードは人の「ごはん」のようなものだからおかずにあたる肉や野菜をたくさん与えたほうが健康に良い。

 現在市販されているドライのペットフードは「総合栄養食」と呼ばれるもので、そのフードと水で健康が維持できるように作られています。つまり、フードは「ごはん」ではなく、「ごはん+おかず」なのです。そこにさらにおかずを加えると、加えるものやその量によっては全体の栄養バランスを崩す結果となります。たとえば、肉を必要量以上に与えるとします。よく食べるので、一見飼い主様も犬も満足しているように感じます。ところが、体の中では、肥満、あるいは栄養不良をはじめカルシウムとリンのアンバランスにより骨が弱くなる、肝臓や腎臓の機能に負担がかかるなどで健康な体に鞭を打ち働かせているのです!。ドッグフードを与えている場合はフードから主食として90%、まぜものとおやつは10%以内とし、全体の栄養バランスが崩れないように維持することこそが愛犬の健康維持に重要です。


③手作り食はペットフードよりも安全で犬の健康に良い。

 食事は各犬の健康状態に適しているかどうかが大切です。もちろん、必要な栄養バランスやエネルギー量がそれぞれの個体に適している手作り食であれば、健康を維持していくことができます。しかし、「適当な手作り食」は逆に愛犬の健康状態を崩す危険があります。栄養バランスや必要なエネルギー量は、性別、運動量、去勢や避妊の有無、環境や性格、健康状態などにより様々であり、「これが誰にでも良い」という食餌はないからです。また、手作り食は飼い主様の知識や時間がドッグフードより多く必要なため、それをすることが「自分」に適しているのかどうかも考えるべきポイントです。
 このように、飼い主様が「よかれと思ってする大きな間違い」は意外と多くあるものです。ところが、気づき、さらに認めるのに時間がかかるのも人間という生き物です。万物は「陰陽」の組み合わせで成り立っているように、どんなによいことでもその反対側にはデメリットがあります。そのデメリットも理解した上で、それでもバランスがとれるようであれば、自分の思い込みは単なる思い込みではなく、「知識」に変わります。「これっていいに違いない!」と思った時には、実行する前に「デメリットはあるか?」を考えたうえで、行動を起こし、愛する家族であるペットの健康を守ってあげましょう。

一覧ページへ戻る