何で食べないの!?

   これは、小型犬の飼い主様からよく出る質問です。多くの場合、食事以外の食べ物を与えすぎているために食事の時間に空腹感がなく、食べられないというのが現状です。しかし、問題がここに無い場合飼い主様は途方にくれてしまいます。新しいフードに切り替える、別の食べ物を混ぜてみる、あるいはお腹がすけば食べるからと放っておくなど様々な工夫をしても解決しない。いったい何が問題なのでしょうか?

  おやつ以外で考えたいのが、「健康状態が正常かどうか」ということです。まず自分に置き換えて考えてみましょう。健康な時は何でもおいしく食べられるのに、体調が悪いと、食べられるものと食べられないものがありますね。たとえば、胃がムカムカしているとき、目の前に日本茶とコーヒーを出されたとします。私たちは何の迷いもなく日本茶を選びます。これはムカムカの原因の胃酸濃度の上昇を中和しようとアルカリ性物質を取るように身体が教えてくれているからです。人間をはじめ、動物は本来、無意識に体調に即した食べ物を摂取し、健康状態をコントロールすることができます。ところが、人間に飼育されている動物では、体調に応じた食べ物を自ら選ぶことはできません。そのため、飼い主様が気づかない限り、いつもと同じ食事が同じ量でてきます。犬は臭いで状況を判断しますが、食餌もしかり。現在食べるべきでないと認識したものはたべません。しかし、空腹を感じているので胃液濃度は上昇します。食べたいけど、食べられないのです。そしてこのような状態を繰り返しているうちに、少しずつ消化器官に負担がかり炎症をおこし、さらにそれを放っておけば消化器疾患になることもあります。また、食べないと不安になる飼い主様は犬の口にフードを押し込みます。犬は信用している飼い主様がくれるので口へ入れますが、実はこれが「食べること=嫌なことをされる」と学習し、ますます自分では食べなくなり、体調不良だけではなく、食べ物に対するトラウマも生じていたりします。

 つまり、飼い主様のやることと、犬のきもちは逆行していることがあるんですね。さらに飼い主様は心配だとサプリメントなどを「加える」ことを考えますが、犬がしてほしいのは、問題点を「引いていくこと」です。まずは、消化器官を1~2日休ませてあげましょう。ドッグフードの場合は、下痢や嘔吐がなければいつものフードの1/3程度をぬるま湯でふやかしあげてみます。食べられたらその次の食事は1/2量にとふやしていきます。ただし、ふやかした方が消化に良く、嗜好性もあがりますが、胃、膵臓や肝臓が疲れているときは臭いが強くなるのを嫌がります。タンパク質や脂肪の高い食餌は消化に時間がかかるため厳禁です。「ごはん+お肉」のような低脂肪で消化に良いシンプルな食事を一時的にあげるといいでしょう。また、嘔吐の回数が多い場合は肝臓などに問題がある場合があるので動物病院で調べてもらってください。

 動物にとって食べることは生きること。それを拒絶するには必ず意味があります。できるだけ早く見つけてあげて、「食べること=楽しいこと」と学習してほしいですね。

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