愛犬にとっての優先順位

 飼い主様が愛犬に良かれと思ってしていたことが、実は愛犬にはマイナスだった!ということは実は良くあることです。ここには二つの大きな理由があります。一つは、「愛犬を愛するあまり擬人化してしまうため」もう一つは、「犬を見ずに、飼い主様の思い込みで行動してしまうため」です。
 愛犬は家族の一員。擬人化したい気持ちはよく分かります。しかし、擬人化して、人間に良いと思うことをすべて犬に取り入れることと、犬の健康状態や生活環境を配慮上で、犬にも対応可能な人間で良いことを取り入れていくことは全く異なります。前者でありがちな身近な例が「野菜の与えすぎ」です。人間は「お肉を100g食べたら野菜はその3倍の300gは食べなくてはいけない」という知識があるせいか、どの飼い主様も野菜を愛犬にたっぷりと与える傾向があります。しかし、犬は雑食とはいえ本来肉食動物です。野菜の与えすぎは、軟便、下痢、嘔吐、栄養吸収不良と犬にとってはマイナスの要素が多くなります。もし、これを後者の考えに基づき行うのならば、それは犬にとって、排便の促進、減量や満足感といった良い結果を生み出すのです。そのためには、現在どの位の食物繊維を食事からとっているのか、愛犬の体型は適正か、どんな野菜が愛犬には適しているのかといったことを知ることが、与えることよりも優先です。
 また、飼い主様の思い込みでありがちなのが「加える」という法則です。たとえば、愛犬が嘔吐をしているとします。すると、飼い主様は食べないとやせる、食べないと体力が消耗するということに気持ちが集中するため、「何か食べるものを加えたい」と考えます。ところが、犬の身体は何か問題があるから嘔吐をするわけです。そんな時、飼い主様の思い込みを優先してあげてしまえば、また嘔吐をする可能性が考えられます。動物にとって「食べることは生きること」だという本能があるため、「食べたい」という願望があるのが普通です。ところが、「食べると吐く」ことを繰り返すと、それはやがてトラウマとなり「食べること=嫌なこと」と学習してしまうので食事の調整が更に困難になります。一時的に食べることは飼い主様の気持ちを満たすものかもしれませんが、本当に大切なのは、嘔吐の原因をさぐり、消化器官を休ませてあげることです。その間、体内のバランスを保つ水分補給と腸内細菌をサポートするプロバイオティクスを与え、そして低脂肪な食事を少量からから徐々にもとの食事に戻し、食べることと吐くことが結びつかないようにするのが回復への近道だと考えます。
 物事には優先順位があり、それは何が対象であるかにより順位が異なります。愛犬は飼い主様に生活のすべてをゆだねているため、飼い主様が優先なのは言うまでもありませんが、愛犬の健康管理に関しては、目の前で起きていることの直視した優先順位を考え、愛犬にかかる負担を減らしてあげましょう。それは結果として飼い主様の心の負担を減らすことにもなると思います。

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