人間のおかゆ Vs. 犬のおかゆ

 急に寒くなりました。寒がりの私は朝食も温かいものが食べたい!というわけでここのところ朝は卵粥を食べています。卵粥には「だし」をとるため愛犬の鶏肉を少々失敬して加えます。すると彼は自分のごはんだと思い私が食事をするとき当然のように目の前にきちんと座り、おかゆを口に入れてくれるのをまっています。おかゆは消化にもよいし、この乾燥する時期には水分補給もかねるのでもってこい!の食事のはずですが、これを犬の常用食にするにはいくつかの欠点があるので、今回はそのことをお話します。

 手作り食をご自分でされている飼い主様の多くが、なぜか「おかゆ」あるいは「雑炊」ごはんをあげています。おそらく、前述したように「消化」が良いということ、そして水溶性の栄養素も一緒に食べられるといった発想からだと思います。口から食べ物を入れたとき、この「お粥」を作ってくれるのは「胃」です。食べ物が胃に入ると、胃酸と消化酵素によって肉や魚などのタンパク質の消化が行われます。さらに胃は、もむように動くことで食べたものを「かゆ状」にしす。つまり、最初から「おかゆ」を食べることは、胃の働きを休めることになります。よって、人間は胃が疲れたときは「おかゆ」を食べるのも納得です。ところがここでひとこと。「身体は甘やかすとなまります」。つまり、弱ったときに休めてあげることは重要ですが、なんでもないときに甘やかすのはかえってもともとの機能を低下させることになります。これは骨折などでしばらく筋肉を使わないと、すぐに筋肉がなえてしまい歩くのさえ疲れるというのと似ています。消化器官も筋肉運動なので、動く筋肉は動かしてあげた方がよいのです。また、「人間のおかゆ」と「犬のおかゆ」の原材料を考えて見ましょう。「おかゆ」は胃の働きを休めるためであり、胃で消化できるのは肉、魚、卵や乳製品のタンパク質です。よって、胃を本当に休めたいとき、おかゆの中身は「ごはん」それも最も消化の良い「白米」だけということになります。しかし、そこまで疲れていない場合は栄養の摂取も必要なので、胃で消化できる消化の良いタンパク質源、たとえば卵などを加えます。しかし、この中に大量の野菜は禁物です。野菜に含まれている食物繊維は人や犬にとって消化されるのではなく、分解される栄養素。もちろん腸内環境の適正化をはじめ多様なメリットはありますが、必要量を超えると逆に胃や消化器官に負担をかけ、またその他の栄養の吸収を妨げてしまうのです。しかし、おかゆごはんを与えている飼い主様のレシピには数種類の野菜が必要量よりも多く入っていることが多いのが特徴です。つまり野菜たっぷりのおかゆごはんは、消化器官を休めるどころか刺激し、一方で消化能を低下させているという矛盾を生じます。もし、おかゆごはんを主食に選ぶ場合には、食事が犬の消化器官に負担をかけない栄養構成であり、かつエネルギーが十分なものにしなくてはなりません。しかし、この場合、水分を多く含んでいるので全体量がとても多くなってしまいます。これが、飼い主様が自ら作るとエネルギーや栄養が不足し、アンバランスな食事になる原因です。このような食事はすぐに空腹になるため、胃液の分泌が高い傾向がある場合、空腹すぎて胃液を吐く原因にもなります。

 本当に消化器官を休めたいとき、はただすべてを混ぜたおかゆを与えればよいのではなく、悪いり状態を良い状態に導く手順が必要です。最初は鶏のスープと少量のごはんだけのゆるいおかゆ、それから少量の肉(低脂肪のもの。高脂肪食品も胃に負担をかけます)をあぜたおかゆ、そしてそれが大丈夫ならばごはんと肉をまぜたもの、最後にそこに少量の野菜をまぜた食事。と、徐々にいつもの食事に戻していく必要があります。

 体調はよい時ばかりでではありません。いざというときに対応できる食事のあり方を考えることも大切です。

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