良くみかける犬の皮膚腫瘍



肛門周囲腺の腫瘍
肛門の周囲にある分泌腺(多くは皮脂を分泌している)から発生する腫瘍で平均11歳のワンちゃんに発生します。肛門の周囲だけでなく、下半身のどこにでも発生する可能性があります。良性(肛門周囲腺腫)と悪性(肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌)のどちらも認められますので切除した組織を病理検査する必要があります。治療は外科切除、去勢手術、ホルモン剤の投与、放射線治療などがあります。予後は、肛門周囲腺腫は良好ですが、肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌は、注意が必要です。


皮脂腺腫瘍
平均9−10歳のワンちゃんに認められる腫瘍で、被毛はなくカリフラワー状でピンク色をしていたり、多発することもある腫瘍です。治療方法は外科的切除です。犬の皮脂腺の腫瘍は通常良性ですが、まれに皮脂腺癌という悪性腫瘍も認められますので、やはり切除した組織を病理検査する必要があります。


マイボーム腺腫
老齢犬のまぶたに良く認められる腫瘍です。まぶたにできるため眼球を刺激するので、涙や目やにが多くなります。症状がひどいときには、外科的に切除します。通常は良性ですが、類似した悪性腫瘍も認められますので、やはり切除した組織を病理検査する必要があります。


組織球腫
若い犬に発生する良性の腫瘍で、頭、耳や足に好発します。50%が2歳以下の発生であるとの報告があります。通常、直径3cm以下でドーム状、木イチゴのような見た目の腫瘍です。急速に大きくなるのでびっくりしますが、大半は3ヶ月以内に自然になくなってしまいます。しかし、ワンちゃんが気にして舐めたり、引っ掻いたりする場合には、外科的に切除します。



時々見かける悪性皮膚腫瘍


肥満細胞の腫瘍
いろいろな形態をとる皮膚の悪性腫瘍でボクサーやG.レトリバー、パグなどに見かけます。また、身体のあちこちに多発することもあります。進行するとリンパ節、肝臓、脾臓や骨髄に広がっていきます。また、腫瘍細胞が作り出すさまざまな物質によって、ワンちゃんの具合が悪くなります(吐き気、血液が止まりにくいなど)。治療は、広範囲の外科的切除で、補助的に放射線治療を施すことも有ります。切除した組織を病理検査することで、腫瘍の悪性度が判定できるので、予後判定の基準となります。


皮膚悪性黒色腫(malignant melanoma)
犬における腫瘍発生率は2-3%で、好発部位は眼瞼、指、体幹です。直径0.5cm-10cmの黒色、灰色や褐色のしこりで、ドーム状であったり潰瘍を起こしていたりもします。診断はしこりを切除しての病理検査で行います。悪性黒色腫は進行すれば、リンパ節や肺などに転移を起こしていく可能性がある悪性腫瘍です。とくに、指や爪の根元に発生した悪性黒色腫は体幹にできたものに比べて悪性の挙動をとることが多いようです。




皮膚の腫瘍は、飼い主様に比較的早期にわかりやすいと思います。ブラッシングやシャンプーの時など、あちこちワンちゃんの身体を触ってみてください。皮膚の腫瘍は小さいうちであれば治療しやすいので、気になるしこりができたら様子を見ずに早めに検査しましょう。

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